Q&A
知財業界 転職Q&A
3. 知財業界における資格技術
Q3-1. 弁理士資格の実情とは?
弁理士試験は入学試験でない
「知財と言えば弁理士」 知財業界に携わるなら、まず弁理士資格を取得すべきと考え、弁理士試験の準備に余念のない方が多いことと思います。 しかし、キャリアプランを明確にせずに、弁理士資格取得に奔走するのは少々危険です。業界の門扉が司法試験で一元化されてきた弁護士に対し、知財業界に入るのに、弁理士資格は絶対必要ではないためです。 実際に、特許事務所で実務経験を積み、その上で弁理士資格を取得して、キャリアアップを図った方が、多くご活躍されています。弁理士資格を持っていても、現時点で厚遇される知財部は少ないため、特許事務所の実務に早くから習熟しておくことは、弁理士として生きていく上で、大変重要なことと感じます。 弁理士資格は業界入門のための試験でなく、事務所経営・訴訟代理など、更なる高みを目指すための試験、こうした考えを持たれた上で、資格と実務をバランスして、キャリアプランを考えて頂きたく思います。また、弁理士資格を取得された方は、一刻も早く実務に就くことをお勧め致します。その際は、弊社、無料転職サポートもご活用下さいませ。
弁理士試験のこぼれ話
補足として、実務経験ある弁理士が評価される中、近年は学生の合格率が随分と高い傾向にあります。これは弁理士資格が実務に直結した資格ではなく、あくまで知識量を試す試験であることに起因する様です。知識の吸収量を比べれば、学生が優位なのも当然でしょうか。 こうした実情を踏まえ、知財検定という実務に即した試験によって、業界における能力評価を標準化していこうとする動きがありますが、こちらは特許事務所において評価されていると言えず、あくまで、企業知財部向けの資格であることに留意して頂きたいと思います。
Q3-2. 知財検定はどう評価されるのか?
いよいよ国家資格に移行
より実務に即して、知財スキルを評価する資格を。このような理念から、主に企業知財部で勤務する社員のために、知財検定がスタートし、国家資格への移行が始まりました。 受験資格として、一定の実務経験を要求するなど、実務に即した知財スキルを担保する取り組みがなされていますが、知財業界は、この資格をどのように評価しているのでしょうか?
知財検定の実状
国家資格への移行が、本文執筆中の2008年夏のため、インパクトが現れるのはこれからですが、業界団体が普及を推進していることもあり、今後、企業知財部では評価される事も有り得るかと思います。 ただ、その難易度は2級程度では易し過ぎるとの声もあり、最近注目を浴びては来たものの、結局は業界入門の資格であり、実務の中で競争すべき事を、常に意識しておく必要があります。また、特許事務所への転職に於いては、ほとんど考慮されず、相変わらず、実務経験及び弁理士資格が重要視される状況です。 ただ、知財業界への転職にあたって、知的財産法の勉強は必須なので、その勉強に費やした労力を形にできるという意味で、知財検定を受験される事は有意義かと思います。
Q3-3. 知財業界で重宝される技術分野は?
企業知財部と技術分野
技術系の方が知財に関わる職種としては、主に企業知財部、特許技術者(特許事務所)があります。 企業知財部においては、多くが明細書作成を特許事務所に外注しており、発明者と特許事務所の間で技術内容を仲介する、納められた明細書の文面を出願前にチェックするなど、側面から技術を見る業務が中心です。 選考に於いては、技術分野の一致を良しとした上で、知財部経験、マネジメント経験や英語力など、より幅広い要求が課されます。
半導体(電気)・機械分野の求人が多い
一方、特許技術者の場合は、明細書作成という技術的内容をアウトプットする作業が必要であるため、転職の際には、事務所の持っている案件と、技術分野が一致していることが、まず重要となります。 実務経験・英語力などは、事務所により条件が異なり、技術分野さえ一致すれば、開発者から転職するケースも多く御座います。 それでは、特許事務所でどの技術分野が特に重宝されるかですが、特許出願が多い分野ほど、外注される明細書が増えるため、特許が細分化している、半導体(電気)・機械分野ほど求人が多くあります。 他方でバイオ分野は1つ1つの特許の範囲が広いため、出願の数が少なく、求人案件はそう多くありません。選考も厳しい状況が予測されますが、近年は、2分野以上の明細書を書ける人材が求められており、化学+バイオなど、別の技術分野から仕事を始めてバイオ案件にも携わる、といったキャリアプランはありえます。 各事務所が扱う技術分野の詳細に関しては、HPだけで判断することが難しいかと思いますので、弊社、無料転職サポートでご相談下さいませ。
Q3-4. 明細書作成に必要な技術・能力とは?
明細書を書くということ
明細書作成が、特許事務所の中核業務であると聴いたところで、具体的なイメージが湧かない方も多いことと思います。 そもそも明細書とは、特許を取得するために必要な出願書類のうち、最も技術的内容をふんだんに盛り込んだ文書のことです。項目は、発明技術自体の説明の他、出願当時の背景技術、当該技術の応用例と、読むにも書くにも相当の技術知識を要します。 その上で、拒絶されない限界まで権利範囲を広げるために、特許明細書独特の「書き方」を学んでいく必要があります。これは突き詰めると、いかに特許庁の審査官の心理を読み解き、登録査定させるか、という心理戦に帰着する様です。
資格の前に、実務が重要
「弁理士資格をとっても転職できない」方が多くいらっしゃいますが、これは上記の事情が一因のようです。弁理士試験は、知的財産法全般の法律知識を問いますが、いざ弁理士として特許事務所で働くためには、研究開発経験×弁理士資格ではまだ足りないのです。 一方で、明細書作成能力さえあれば、弁理士資格を持たずとも、多くの転職先からオファーが来ます。それは明細書という成果物が、ほぼ個人プレーの産物であり、多く書ければ書けるほど、1人で事務所に収益をもたらすことが出来るためです。 そして給与に関しても、より多くの明細書が書ければ、より高給に繋がるケースが多く、一般的な傾向としては、小規模な事務所ほど、実力による年収差が顕著であり、大規模になるほど、勤務年数など他のファクターが大きくなります。 これは裏を返せば、自分の仕事が極めて客観的に評価され得るので、特許事務所は実力主義である、という表現がしばしばなされます。
Q3-5. TOEICスコアは、知財業界で評価されるの?
TOEICの点数が良いだけでは足りない?
知財業界の転職で、英語力がいかに評価されるのか、気になる方は多いかと思います。ただ、他の資格と同様に、その資格・スコアの取得が、本当に実務に要求されているのか、情報収集して確認する必要があります。 ビジネス英語力の試験と言えば、TOEICが一般的ですが、TOEICの形式はリーディング・リスニングのみであり、特許技術者・翻訳者に必要なライティングの能力を測れません。また、明細書の作成・翻訳には、出願が拒絶される限界まで、権利範囲を広げるための独特の表現方法が存在するなど、即戦力を望めば望むほど、実務の中での英語力が重要視されます。 また、語彙等に関しても、知財実務にはビジネス英語だけでなく、技術英語の知識が必要であり、現段階で適切な試験方法がないため、結局は、実務の中で技術英語を扱ってきた経験が問われます。
TOEICスコアが求められる職種もある
ただ、海外とのレター交換と言って、出願手続きに際して海外代理人とやりとりする必要のある、海外事務(外国事務)と呼ばれる職種に関しては、一般的なビジネス英語のコミュニケーションが要求されるため、TOEICスコア等が、選考条件に含まれるケースは多いようです。 また近年、メーカー各社は海外市場までアンテナを張る必要に迫られ、知財戦略において、海外出願まで考慮する場合がほとんどです。そのため採用・人事考課において、ビジネス英語力を評価に加えるのは当然であり、TOEICスコアで英語力を担保する企業が増えています。企業知財部への転職をお考えの方は、転職先の幅を広げるためにも、TOEICスコアの取得をお考え下さい。
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