Q&A

知財業界 転職Q&A

1. 知財に関わる職業の業務内容

Q1-1. 特許事務所の業務・環境とは?

未知の職場「特許事務所」

特許事務所と一言に言われても、何を収益源として経営されているのか、なかなかイメージできないかと思いますので、簡単にご説明いたします。 まず、メーカーが自社技術で特許を取得(権利化)する際、出願書類の作成・中間処理(意見書・補正書の作成)など、企業知財部は、特許庁へ様々な手続きを行うこととなります。 しかし、これら事務作業を過誤なく行うには大変な専門性が要求されるため、多くの企業知財部が、特許事務所へ、書類作成や手続きを外注しています。このうち、特に専門性を要する作業が、明細書作成と呼ばれる、特許技術詳細を書面で解説する仕事であり、これに関しては、メーカーが社内でこなすことは稀で、ほぼ特許事務所の業務範囲と言えます。 「特許技術者」とは、主にこの明細書作成に携わる仕事であり、特許事務所は、弁理士及び特許技術者が専門的に働く職場のことです。

特許事務所は東京に多い?

上記の業務を請け負うには、高度の技術理解が要求され、企業知財部とのコミュニケーションが不可欠です。そのため、特許事務所は取引先との便を考えて、関東圏に約70%が集中しており、残り30%の多くは、名古屋・大阪周辺に立地しております。

特許事務所でキャリアアップする

また、特許事務所の規模に関しては、個人経営に近い小規模な事務所が500ほど、所員100名以上の大規模な事務所が30ほど、その中間の事務所は2000以上あります。 一般的に、小さな事務所は取引先の特許に広く関わるチャンスがあり、より広い技術分野の明細書作成に携わることとなります。教育に関しては所長の意向が強く反映されますが、業務の中で実践的な指導を受けて、早く成長することを望まれる方、独立を目指して、所長のノウハウを積極的に吸収したい方にお勧めです。 一方で、大きな事務所は技術分野別に組織が構成されているため、自身の技術分野に専門特化して明細書を書くこととなります。勉強会など教育・制度が充実している場合が多く、その反面、業務の裁量は小さな事務所に比べて狭まる傾向にあります。

Q1-2. 企業知財部の業務と、経験が重要視される訳とは?

知財部の業務って?

まず、企業知財部の仕事を簡単に解説します。最近はネーミング・ブランドなど、商標関連も増えてきた様に思いますが、やはり多くは、自社技術の特許出願に関する事務手続きです。 具体的には、技術者の作成した発明報告書をもとに特許技術を理解し、特許事務所に明細書作成を依頼、納められた明細書の文面チェック・修正、他の必要書類および提出期限の管理などです。 こうした事務手続きを行うにあたって、研究開発部とのコミュニケーションが不可欠であるため、研究所などの立地する地域に、多くの雇用があります。 尚、世の中の潮流として、特許の「活用」が叫ばれており、自社特許のライセンス営業・契約管理に注力する企業も増えるなど、企業勤務である以上、ゼネラルに事務作業をこなす必要がありますので、「特許技術者」として明細書書きに特化されたい方は、特許事務所への転職をお勧めしております。

なぜ知財部は経験者を採用するのか?

では、標題の件に関して、企業知財部への転職が知財実務経験者に限定されることが多いのは紛れもない事実であり、要求される経験年数も3年から5年までの案件が多く、高いハードルが課されていると言えます。 その理由としては、業務の専門性の高さが挙げられます。知財部の業務は上記のように、法律・技術に関わるため、要求される専門性が高く、未経験者の場合、相当額の教育コストがかかります。 ただ、社内異動で知財部に就くケースは多いので、一概に教育コストが問題である訳ではなく、転職者を評価する人事制度の構築が難しいことが、結果的に未経験者の転職を難しくしているようです。現在は技術系で働いており、知財部に興味をお持ちであれば、転職と社内異動を、選択肢として考えておく必要があるでしょう。 また、転職採用においては、企業側も即戦力を求めているので、実務経験に限らず、海外案件に携わるだけの英語力も、一般に高い要求が課されますので、企業知財部の志望であれば、TOEICスコアの取得をお勧めします。

Q1-3. 特許技術者とは何ですか?

特許技術者と弁理士資格

特許を取得(権利化)する際、特許庁より定められた出願書類を揃える必要がありますが、この中で「明細書」と呼ばれる、特許技術の詳細を解説する書類は、技術に関する深い理解に加え、特許法及び特許庁審査基準に精通する必要があり、大変な専門性が要求される業務です。 「特許技術者」とは、この明細書を書く仕事であり、特許事務所は、弁理士及び特許技術者が専門的に働く職場のことです。尚、弁理士と特許技術者の違いは「弁理士資格の有無」であり、日々の業務は取引先メーカーの明細書を書くなど、一部の専権業務を除いて、ほとんど変わりありません。将来、侵害訴訟に関わりたい、事務所を経営したいという方には、弁理士資格の取得をお勧め致します。

バイオ系は、特許技術者になるのが大変?

特許技術者になるために、特許事務所への転職を考えられた場合、まず重要なのは現職での技術分野です。 一般的には、特許出願が多い分野ほど、明細書作成という仕事が増えるため、特許が細分化している、半導体(電気)・機械分野には多くの求人があります。知財お仕事ナビは、全国ほとんどの特許事務所と契約しておりますので、漏れのない求人案件のご紹介が可能です。 一方、バイオ分野は1つ1つの特許の範囲が広いため、出願の数が少なく、求人案件はそう多くありません。選考も厳しい状況が予測されますが、近年は、2分野以上の明細書を書ける人材が求められており、化学+バイオなど、別の技術分野から仕事を始めてバイオ案件にも携わる、といったキャリアプランはありえます。

高齢の方は、やはり難しい面が・・・

また、転職の際には年齢も大きく関係して参ります。明細書作成は、技術職の経験の延長上で務まる業務ではなく、上述のような高度の専門性が要求される仕事であり、一から教育を受ける必要があるためです。高齢の方で転職を考えられている場合には、今までの積み重ねが直接活かされる仕事ではない、ということを認識して頂きたいと思います。

Q1-4. 特許事務は、一般の事務と何が違うの?

特許事務の業務とは?

特許事務の業務範囲は、事務所の規模による差はありますが、明細書以外の出願書類の準備、中間処理(特許庁との折衝)、提出書類や保有特許の期限管理など、弁理士・特許技術者のサポート全般に渡ります。 大きな事務所ほど、担当できる仕事の幅は狭く、小さな事務所の方が、特許関連の事務全般に携わるチャンスがあります。商標出願であれば、特許に比べるとハードルが低いため、特許事務の方が商標を担当されている事務所、データベースを使って明細書作成に必要な先行技術調査を特許事務が行う事務所も見受けられます。  総務・経理など、一般的な事務に携わることもありますが、上述の特許に関わる仕事は、特許法の知識が前提となりますので、一般の事務職から転職される場合には注意が必要です。

特許事務は専門職である

また、大きな事務所では、特許事務を国内部・海外部に分けることが多く、海外部であれば、主に海外代理人とのメール対応を担います。海外事務(外国事務)に携わりたい場合には、相応のビジネス英語力が必要とされますので、TOEICスコアの取得は必須であると言えるでしょう。 尚、特許事務員には勉強家の方が多く、重要期限を管理する責任感、要求される知識量ともに、高いレベルが要求される仕事であると言えます。事務という響きに惑わされず、日々研鑽に励まれることが重要です。

Q1-5. 特許翻訳は、一般の翻訳や産業翻訳より難しい?

特許翻訳の難しさとは?

一般の翻訳より難しいと言われるのが、技術英語の知識も問われる「産業翻訳」であり、さらに難しく間口が狭いのが「特許翻訳」です。 特許翻訳の難しさは、法律英語の知識が要求されること、特許文献ならではの「造語」を翻訳する必要があること、にあります。 外内案件(海外の特許技術を日本特許庁に出願)の場合、求められるのは日本特許法の知識のみですが、内外案件(日本の特許技術を海外特許庁に出願)の場合には、海外の特許法の知識まで必要とされるため、多くの事務所が海外の代理人に委託することとなります。ただ、内外案件まで扱う日本の特許事務所もあり、そうした事務所は、内外案件を扱えることに誇りを持っています。

「造語」を翻訳する?

また、特許がそもそも新規の技術を文章で表現しているため、適切な用語がない場合、「造語」を使って表現の幅を広げます。こうした造語の翻訳に対処するためには、当該技術分野に関して、知識構造を体系化しておく必要があり、習熟のためには経験を要します。 上記2点に加え、特許文献はそもそも難解であり、高度の論理的思考が要求されるため、TOEIC等の一般的な試験では評価できない面が多く、多くの経験者向け求人案件が、弊社に多く届いております。

Q1-6. 特許事務所の業務の中で、磨けるスキルとは?

国語のスペシャリスト

特許技術者の業務は、明細書作成が中心であり、技術知識・法律知識もさることながら、何より論理的な文章を構成する力が身につきます。「国語のスペシャリスト」とも言えるでしょう。 特許事務は、明細書以外の出願書類の準備、特許庁との折衝や提出書類の期限管理に加え、一般の事務作業を担いますが、事務所により、商標出願や特許調査まで携わることができ、知財に関する幅広い知識とともに、機密情報を遅滞なく処理する責任感が身につきます。 特許翻訳は、国内外の特許法知識に加えて、特許翻訳に必要とされる、知識構成力・論理力が身につき、高度の専門性が滋養される職種です。

更なるキャリアアップのために

各職種のキャリアステップとして更に、技術分野を広げる、国内→海外の案件にチャレンジする、弁理士資格をとる、訴訟代理人資格を取る、などの選択肢があります。 尚、特許事務所は、評価が給与に如実に反映されることが多いため、コツコツと努力すれば、自己・他者評価ともに明確に得られる仕事です。