セミナーレポート:「技術者・研究者からの知財キャリアパス」

公開日: 2024-11-16

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2024年10月25日、株式会社知財塾と知的財産教育協会とのコラボ企画セミナー「技術者・研究者からの知財キャリアパス」が開催されました。
このセミナーでは、株式会社知財塾・代表取締役の上池より、知的財産管理技能検定の資格を取得されていたり、知的財産アナリストの認定を受けられていて、知財業界に興味のある技術者・研究者の方に、業界での具体的な業務内容や、どういったスキルが評価されるのかをお伝えしていきました。

自己紹介・会社紹介

知財塾で代表をしております上池です。
私のバックグラウンドは法律系で、東京理科大学の大学院を修了後、サイボウズ社のインフラエンジニアを3年くらいやった後に、特許実務を始めました。特許実務は技術的な知識・理解が必要で、私は入社後にOJTを通じてキャッチアップしましたが、元々学生時代に工学、化学系、バイオなどの研究をされていた方はそのときの経験が特許業務に生きてくるのではないかなと思います。

株式会社知財塾は、2021年に実務家の育成を目的とした演習形式のゼミなどを開催する会社として立ち上げました。
これまで累計で350名以上の方に受講いただいており、今年からはサブスクで動画配信する「知財塾Now」というサービスもスタートし、早速100名以上の方にご利用いただいています。
一昨年より、知財業界に特化した人材紹介サービスという形で、教育事業と連携させ、知財業界でキャリアを築きたい方に、スキル・キャリアアップの支援を両輪でできる事業展開をしております。
知財アナリスト向けのメンタリングサービスの運営もしている繋がりで、今回の知的財産教育協会とのコラボセミナーを開催する運びとなりました。

知財業界の構造と主要な職種

技術者・研究者からの知財業界へのキャリアパスはどのようなものがあるか。上池は「企業知財部で知財業務」「特許事務所で専門的な仕事」「知財関連の調査会社」と3つの選択肢を提示しました。


業界構造として、まずは企業知財部で発明が生まれ、発明を権利化するための書類作成・手続を依頼する先として特許事務所があります。発明が特許になりうるかの調査機能は企業知財部や特許事務所自身で持つこともありますが、それとは別に専門の調査会社も存在します。調査部分は専門性を有することが多いため、企業知財部からも特許事務所からも調査会社に依頼するケースが発生します。そのような業界構造で知財業界は成り立っています。

企業知財部
企業内にある発明を発掘し、適切に権利にするべく出願権利化の対応をする。必要に応じて調査分析も行います。大手企業で、数十名〜百名規模で知財部員がいる会社では業務内容は細分化されているため、業務ごとにスペシャリストとしてのスキルを身につけていく形になります。中小規模の知財部ですと、あらゆる業務を網羅的に幅広く対応することに。
知財の実務に限らず、他部署との調整や、自社の発明をいかに有効な権利にしていくかという戦略部分にも頭を働かせる必要があるため、事業部と連携したり、IPランドスケープという形で他社の特許調査分析をして、より効果的な出願権利化に繋げていく動きをすることも重要になってきます。

特許事務所
企業からの依頼に、出願権利化の書類作成や鑑定などの専門的な業務を行います。権利化に対する高い専門性と知識が必要です。
クライアントの知財権を法律面で適切に保護活用していくという点で、特許登録後の期限管理なども事務所側で担うこともあり、クライアントの様々なニーズに合わせて対応していきます。
個々人の働き方としては、成果重視なところはあるかなと思います。また、特許事務所でメインの窓口になる・名前を出して活動していくところは弁理士資格が必要ですが、弁理士の補助をする役割として特許技術者という職種があります。特許技術者としてスキルを身につけたり、働きながら弁理士試験に向けて勉強するようなケースも多いです。

調査会社
企業知財部・特許事務所のパートで話したような調査部分をより専門的に行います。
ここは調査における高い専門性が必要ですし、さらにただの調査に終わらずに、その先の分析などまで踏み込めたりすると、高いバリューが出せます。比較的スピードが求められる仕事にはなっているかなと思います。

評価されるスキル・資格

資格でいうと大きく知的財産管理技能士と知的財産アナリスト、弁理士があります。
管理技能士は効果的に知財を管理し、利益の最大化に繋げる資格。アナリストは知財の価値評価などを通じて経営戦略にする提案を行っていく、まさにIPランドスケープを推進する資格です。
弁理士は知的財産権の取得や紛争解決を専門職として行います。弁理士の独占業務をやるとなると、特許事務所で働く選択肢が主流ですが、企業知財部にいても、対外的な活動をしたり、海外の方とのやり取りをする場合などは弁理士の資格が生きてくるケースはあるというところかなと思います。

続いて、知財業界で必要とされるスキルをピックアップします。

一つ目は各分野に関する技術の知識。入った企業や事務所によっては、自分の専門外のこともやることにはなりますが、新しい知識をキャッチアップするための土台として、ある程度の技術知識を持ってるところは評価されます。
文章読解力・作成能力。論文や公報といった様々な資料を読みながら、正確な情報をキャッチアップするところが業務のスピードを上げたり、的確な判断をするために必要です。作成能力は、明細書作成・意見書作成などがまさにこの能力そのもので、書くべき内容を適切にアウトプットすることが求められます。
知財実務や制度に関する知識。この知識の部分は、知的財産管理技能検定2級を取得できていれば、一通りの業務はできるかなと思っております。
論理的な思考力。文章を書くとか、拒絶理由に対応するための中間処理において、審査官にロジカルに説明するための能力、ロジックを組むための能力です。また、企業知財部にいると戦略策定や経営層とのコミュニケーションも発生するので、適切に状況を整理し、物事を体系的に考えた上で、ロジックを組み立てる能力が求められます。
組み立てたロジックをわかりやすく伝えるためのコミュニケーション能力。いろいろ話せる、たくさんの人と交流できるという文脈より、適切にステークホルダーとすり合わせをしていくイメージです。
企業知財部であれば、発明者や経営層から聞いた内容の意図を汲み取って整理し、自分の部署のアウトプットをわかりやすく伝える。特許事務所については、クライアント対応がメインにはなってきますので、クライアントの希望をヒアリングして、発明を発掘していく、どこがポイントになるかをヒアリングの中で把握し、伝えていく。
そして最後に英語力です。海外とのやり取りや海外に出願するケースもありますし、実際の手続きを行う特許事務所の方が求められる傾向にはあるかと思います。
スキルについては、自分でスキルの整理、棚卸をしながら自分に足りない点・伸ばすべき点を見つけていくと、より高いバリューを出せる人材に成長していけるかなと思います。

転職成功事例

ここでは、実際に技術・研究職から知財業界へ転職した成功事例を紹介しました。

全体の傾向として、未経験での企業知財部への転職はハードルが高いです。そのため、例えば現在メーカーで研究開発部門にいらっしゃるという状況の方であれば、自社の知財部に異動して、そこで実務経験を積むことができると望ましいです。
結構弊社には「知財業界で働きたいけど社内異動が難しいから転職を考えてる」というご相談が多いです。そのような場合、最終的には企業知財部で働きたいけれども、一旦実務経験を積むために事務所や調査会社に入るというのが、長期的なキャリアの中での選択肢になってくる。でも実際に入ってみたら、事務所の方が向いており、そのまま弁理士資格を取ってスペシャリストになるというような方もいらっしゃいます。
長期的なキャリアビジョンを持ちつつ、そのときの事情に応じて、転職先を選択した上で、実際働いてみた上での適性を見ながら次のアクションを取っていくところがキャリア選択では必要な視点かなと思います。

それから、年齢が若いとか、弁理士資格があるケースは結構有利に評価されます。未経験で企業知財部に転職したいという場合でも、企業側でもプラスに評価して採用に繋がるケースはあります。
バックグラウンドがどれぐらいあるかと、先ほどご説明したスキルの部分がどれぐらい評価できるか、そして年齢と資格の有無。これらが総合判断されるとお考えいただくのが良いです。今の自分が持っているカードは何か、どう生かしていくか。足りない部分はどうやって見つけていくか。資格やスキルを身につけた上で転職活動するのか、早いうちに実務経験が積めるところにとりあえず入るのか、といったような、いくつか選択肢の中での判断ができているところかなと思います。

知財業界に転職するメリット

適性がありますので、今技術者として大きな成果が出せている方は多分そちらが向いていることもあるとは思うんですけれども、研究開発者のキャリアから知財業界への転職するメリットは、身につけた技術的なバックグラウンドや、学生時代に研究・専攻した分野の知識を活かせるところが大きいかなと思っています。

また、知財業務はビジネスの視点や法律の視点を求められます。企業知財で働くにしろ、事務所で働くにしろ、調査会社で働くにしろ、どういうビジネスでどういう権利を取っていくのか、最終的なアウトプットがどういう価値に繋がるのかを考えていくことでいい仕事ができます。今まで技術の視点だけで仕事をしていた方は、知財実務を通じてスキルの幅や視野の広さを身につけていくことで、さらにキャリアの選択肢が増えると思います。

あとは定年にとらわれずに、長期的なキャリアを築けます。特に特許事務所は定年がないことが多く、明細書作成スキルや中間対応のスキルを持っていれば、ある程度業務量をコントロールした上で、年を重ねても働き続けられる仕事です。
企業の知財部で働かれている中で提案力や分析力を上げていった方は、定年後に独立され、知財コンサルとして活躍されている方もいらっしゃいます。きちんとスキルを身につけていけば、定年で終わらせない働き方も実現できる業界かなと思います。
あとは事務所寄りの話にはなりますが、弁理士として実務能力をつけていれば、30代40代を、時間の自由や勤務地の自由を持ちながら仕事することもできるかなというところです。

知財塾の転職支援サービスについて

ここまでお伝えしたような話に関するような、知財業界での転職相談を知財塾では行っております。
弊社の転職サービスのメリットは、知財業界専門というところで、豊富な情報や知財業界特有の事情とかに応じた、細やかなサポートを提供しております。
会社規模的に大手の転職エージェントの方が求人数が多かったりして、そこは正直足りてない部分はあるかなと思うんですけれども、情報収集や自分のキャリア・スキルの棚卸のために相談に来ていただくのでも全然大丈夫です。
知財塾が教育事業をやっていることもあるので、実務スキルを身につけていくためのアドバイスも、実務スキルを身につけるためのサービスの提供もしています。このような支援・提案ができるのは知財業界においても知財塾のみですので、メリットに感じていただければなというところです。

今年に経産省からリスキリング事業の採択を受けており、実務未経験者で知財業界に転職したい方に対して、知財塾の演習コンテンツを無償提供できます。まだ業界のイメージがついていないとか、スキルを身につけられるか、適性があるか不安という方も、実際にどういうことをやるのか、知財塾の演習コンテンツで知っていただくステップを挟む転職活動もあるのかなと思うので、ご相談いただければなと思います。

改めてメッセージ

知財業界は、技術的なアイディアを価値にしていく、ビジネスに繋げて権利にして、お金に動かすサイクルを回していく、とても楽しい業界だと個人的には思っています。
その業界で仕事をするにあたって、皆様のような技術的なバックグラウンドを持っていることは大きなアドバンテージです。そういった皆様にぜひ知財業界に興味を持っていただいて、働いて価値を発揮していただけると、知財業界もより活性化していくんじゃないかなと思っています。
今日の話で興味を持っていただいた方は、ぜひ知財塾までご相談いただければと思います。


今回のセミナーを通じて、知財業界でのキャリアを選択肢の一つとして持っていただけるような方が1人でも増えたら幸いです。参加者の皆様、どうもありがとうございました。


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