中規模企業の知財部門で働くということ

公開日: 2025-05-18

この記事の話し手

上池 睦

従業員1,500人ほどの中規模企業で、知財部門に所属しています。法務とは別組織になっていて、特許も商標も、知財業務はほぼ全般的にカバーしています
この規模、この体制で知財業務をどう動かしているのか?
実際に働いて感じていることを、ひとつの事例として紹介できたらと思います。

知財部の業務って、何をしているの?

ざっくり言えば、「特許と商標まわりの全体」を担当しています。
たとえば特許であれば、
・社内の発明を掘り起こして、
・出願の方針を決めて、
・特許事務所に依頼し、出てきた明細書をチェックして、
・最後の権利化対応まで行う

登録後の維持管理も、もちろん業務の一部です。 他には、社内向けの啓発活動や、調査・分析的な業務も少し含まれています。

中規模企業ならではの知財のスタイル

私のように中規模企業で知財をやっていると、まず感じるのは「全部やる」ということ。
大企業のように「出願専門チーム」や「調査専門チーム」があるわけではありません。
一人が、知財業務の“入口から出口まで”を持つのが基本です。
だからこそ、
・知財業務の流れがよく見える
・自分で意思決定しながら進める
・現場と経営層の距離が近いから、連携しやすい

といった、広さと深さの両方が味わえる環境だと思っています。

面白さと難しさ、両方ある

複数の製品・サービスがある会社なので、それぞれの事業が違うフェーズにいることも多いです。
そのため、同時に複数の案件を、別々の温度感で進めなきゃいけないこともある。そこが面白い部分でもあり、大変な部分でもある
全方位で考えないといけないため判断に迷うこともありますが、逆に言えば、知財の仕事ってこんなに広いんだと実感できる環境です。

中規模企業で求められる力とは?

私自身、働いていて強く感じるのは、「コミュニケーション力」と「巻き込み力」がものすごく大事だということ。
社内で知財の専門家は私たちだけ。相手の立場に立って、噛み砕いて伝えたり、時には意見を調整したりする場面が多いです。
あとは、自分で学び、自分で動く力相談できる人に囲まれているわけではないので、自分で専門性を上げていく意欲と習慣が必要になります。

技術職の経験が、いま活きている

私は、知財の仕事を始める前は技術職でした。クラウドサービスのインフラ基盤の品質保証を担当しており、その時にソフトウェアの知識やWebサービスの構造を学びました
結果的にそれが今、
・発明の技術的背景を正しく理解できる
・エンジニアとの会話がスムーズ
・技術的観点と知財的観点の“すり合わせ”ができる
といった形で、知財業務にものすごく活きています

キャリアの可能性も、けっこう広い

知財の専門性を深めていく道もありますし、少人数の部門だからこそ、マネジメントのチャンスも比較的早く回ってくる環境です。
キャリアプランによっては、知財部門を統括したり、バックオフィス領域にキャリアを広げる人もいます。実際、私の上司は会社が300人規模のときに入社し、今では執行役員として知財法務・人事領域を統括しています。
規模が大きくなっていく過程を一緒に歩めると、知財の立場から組織全体に関わっていけるのも魅力のひとつです。

中規模企業の知財部に興味がある人へ

中規模企業の知財は、正直“整備されきっていない”ところも多いです。
一方で、それを自分なりにどう整えて、どう形にしていくかを考えるのが、私は面白いと思っています。
ルールがガチガチに決まっていないからこそ、「動いた分だけ、できることが増えていく」感じがある。
もし転職を考えているなら、事前に見ておくべきなのは「カルチャーとの相性」。企業の雰囲気や大切にしている考え方に、自分がフィットできそうかどうか。ここは、スキル以上に大切だと思っています。

最後に

知財の世界は、「特許事務所」や「大企業の知財部」が注目されがちですが、中規模企業にも、実はリアルで奥深いフィールドが広がっています
いろんな仕事を同時に抱える日々は決して楽ではないけれど、その分、得られる経験の濃さやキャリアの自由度は、何にも代えがたい魅力です。
「整っていないこと」=「可能性の余白」
そう思える人にとっては、きっと面白い場所だと思います。


最後までお読みいただきありがとうございました!
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