「大規模事務所って実際どうなの?」 ── リアルな実務・キャリア・ホンネを徹底解剖!
公開日: 2025-05-25

特許業界でキャリアを積んでいくにあたり、「大規模事務所」で働くことが選択肢に挙がるかと思います。その際に、以下のようなことが気になることでしょう。
・スキルアップできる?
・安定してるって本当?
・自由度ってあるの?
・どんな人が向いてる?
今回は、大規模特許事務所で実際に働く弁理士にインタビューを行いました。内部のリアルな声をもとに、「実務の中身」「メリット・デメリット」「キャリアの分岐点」まで、まるっと解説します。
なぜ大規模事務所を選んだのか
インタビューに応じてくれたのは、現在数百人規模の大手特許事務所で活躍中の実務者。「完全初心者で知財業界に入るなら、“教育体制がしっかりしてる”という安心感が決め手でした」と語ります。
大規模事務所は、これまで多くの新人を育ててきた実績があるため、教育ノウハウが豊富。最初のキャリアに選ぶにはうってつけだったそうです。
実際どんな仕事をしているのか?
・実務:7割(明細書作成などプレイヤー業務)
・マネジメント:3割(部下の進捗・負荷管理など)
プレイヤーとマネージャーの“二刀流”。特許事務所でも、一定年次になると両方求められるポジションが増えてくるそうです。
「大規模ならでは」って、何が違う?
● 分業制と仕組みの強さ
大規模事務所では、役割ごとに業務が分かれており、マニュアルも整備済み。人が辞めても“仕組み”で回るのが強み。
● 会社のような安定感
クライアントの分散管理(ポートフォリオ制)により、特定の顧客依存を避けることで、経営リスクも低減できる。
「1社で90%みたいな依存はない。A社10%、B社15%、C社5%…と分散されていて、ちゃんとしてるなって感じます」
大規模のメリット・デメリット
✅ メリット
・教育・制度が手厚い
・組織としての安定性
・事件系など難度の高い業務にも関われる
・実務スキルが着実に磨ける
⚠ デメリット
・自由な働き方には制限も
・分業の中で視野が狭くなりがち
・「もっとやりたい」人は少し窮屈に感じることも
こんな人におすすめ!
向いている人の特徴:
・与えられた役割をきっちり遂行できる
・黙々と作業を続けるのが苦にならない
・安定志向で、じっくりキャリアを築きたい人
必要なスキル感:
・セクショナライズされた中で成果を出す力
・明細書を“正確に・丁寧に”書く集中力
・(未経験者の場合)技術内容をかみ砕いて説明する力
「いろいろやりたい人は、まずは大規模で修行→中小事務所に転職して幅を広げるのもアリ」とのことです。
大規模事務所で得られる経験
・特定技術領域での“実務エキスパート化”
・侵害訴訟など事件系案件への関与
・分業体制の中でも、スペシャリストとしての立ち位置を確立できる
事件案件を通して、「明細書の書き方に対するフィードバックループ」が生まれるのも成長ポイントの一つ。たとえば侵害訴訟などで自分の書いた明細書が実際に“戦う武器”になると、「どんな書き方が強いのか」「どこが突かれやすいのか」といった実戦的な視点が身に付きます。
そうした経験が次の明細書作成に自然と活かされ、どんどんクオリティが上がっていきます。
大規模事務所でのキャリアパス
大規模事務所で働いていると、ふと「このままここで働き続けるとして、自分はどんなキャリアを歩むんだろう?」と立ち止まる瞬間があります。実際のキャリアパスとしては、大きく2つの方向があります。
1つ目は、技術のスペシャリストとしてスキルを突き詰める道。
明細書作成などの実務を中心に、特定分野に強みを持つプロフェッショナルとして活躍するパターンです。経験を積めば、後進の指導や社内外での技術的な相談役としても期待されるようになります。
2つ目は、マネジメントや事務所運営に関わっていく道。
チームをまとめるリーダーや、クライアント対応を主導するフロント担当、さらには経営にも関わるポジションに進んでいくケースです。
もし今、将来像がぼんやりしているなら、「このまま10年、20年後もこの事務所にいたとしたら、自分はどうなっていたいか?」という視点で考えてみるのがおすすめです。専門性を極めたいのか、人を育てる立場になりたいのか。あるいは、まったく別の道に進みたいのか――。
いずれにしても、今の経験は確実に自分の“キャリア資産”になります。
万が一「やっぱり違うな」と感じても、手に職がある知財業界なら柔軟に転職も可能。だからこそ、「まずは目の前の仕事に全力で向き合って、自分なりの方向性を見つけていく」くらいの気持ちでいると、肩の力が抜けてうまくいくはずです。
転職を考えているあなたへアドバイス
すでに事務所経験がある方へ
事務所での経験がある人は、「どれだけ実務ができるか」が一番の評価ポイントになります。
大規模事務所は分業体制がしっかりしてる分、“そのポジションでしっかり動ける人”を求める傾向が強いです。
そのため転職活動では、
・担当してきた技術分野
・明細書作成の経験
・中間処理や外国出願などの対応範囲
・顧客対応をどれくらい任されてたか
のような内容を、自分の言葉で具体的に説明できるようにしておくと強いです。
事務所未経験の方へ
正直に言うと、未経験で大規模事務所に飛び込むのには、少しハードルを感じると思います。というのも、大規模事務所はある程度役割が決まっていて、「入ったらすぐある程度できる人」を求めていることが多いです。
では、未経験の人がどう見られるかというと、カギになるのは「技術をちゃんと理解してるか」と「それをしっかりと説明できるか」というところ。
面接や筆記試験で、これまでの技術バックグラウンドをもとに、「ある技術をどれだけ深く理解し、自分の言葉で説明できるか」が問われることがあります。
そのため、普段から
・自分が関わってきた技術を、技術者じゃない人にも伝えられるように話す練習をする
・わからない技術が出てきたときに、ちゃんと調べて「自分の言葉で」説明できるようにする
この2つを意識しておくとかなり強いです。
特許の仕事って、技術を“伝える”のが仕事であったりするため、 このスキルは実務でも非常に活きてきます。未経験でも、「この人なら伸びそうだな」と思ってもらえたらチャンスは全然あります。
まずは“伝える力”を武器にして、勝負していきましょう💪
おわりに
──「最初の一歩」としての大規模事務所 ──
「最悪合わなければ転職すればいい。手に職があるって、そういう自由さでもあると思うんですよね」
大規模事務所は、キャリアの土台をつくるには非常に有効な環境。
安定を求める人にも、最初の“修行の場”として考える人にも、適した選択肢になり得ます。
「やってみてから考える」くらいの軽やかさを持って、一歩踏み出してみてはいかがでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました!
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