知財と法務の交差点 - 若手のキャリアを考える

公開日: 2024-03-03

会社員として働く傍ら、若手知財の集まるコミュニティ「知財若手の会(チザワカ)」を主催、自身の会社を立ち上げた上村侑太郎さんと、若手法務の集まるコミュニティ「U-35若手法務の会(わかほう)」を主催しながら、noteでの執筆活動が実を結び、この度書籍を発行される飯田裕子さん。2人の若手人材の魅力的なキャリアを、対談で紐解いていきます。


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お2人は初対面ですね。まずは上村さんから自己紹介をお願いします。
上村:上村侑太郎です。化学メーカー勤務、今年で社会人歴7年目になります、31歳です。大学での専門が修士までバイオだったのですが、情報工学部だったばかりにプログラミングもやっていて、その学歴を見られたのか、化学メーカーに就職したにもかかわらず、機械学習の研究センターに勤務することになりました。
そこでデータ解析分析をやっている途中、知財部門に「データが扱える人間が欲しい、IPランドスケープっていう知財の流行をやる」と引き抜かれて。知財部門でのキャリアが始まったのは2020年からです。当時は正直辞めようかなと思ったけど、案外面白くて。最初の会社で2年経験して、転職して今に至ります。現在の会社でもIPランドスケープ専任で、知財戦略もやっています。

ご自身の会社「Lexi/Vent(レキシベント)」についてもぜひ。
上村:はい。Lexi/Ventという会社を去年8月末に個人事業で立ち上げました。今から紹介される「知財若手の会(チザワカ)」を事業化したいと思ったのと、チザワカの活動をする中で、弁理士の方に声をかけていただいて、弁理士のブランディング、情報発信のお手伝い、イベント企画なども手がけています。


ありがとうございます。飯田さんも自己紹介をお願いします。
飯田:LAPRAS株式会社の飯田裕子と申します。
キャリアとしては、司法試験を目指して勉強していたのですが、挫折し、就職に進路を切り替えました。
当時は弁護士になれないのならいっそのこと苦手なITの会社に行こうと思い、SIerの営業部門へ。
でも就職後にいろいろ経験を積むうちに、やっぱり法律に関わる仕事に就きたいという思いが強くなり、、司法書士法人に転職。行政書士の資格を取り、相続部門と商業登記の企業法務部門を経験しました。その後社内で人事も兼任、さらに、士業総合コンサルティング会社に一人目社員として入社し、営業〜バックオフィス業務全般を経験しました。
そんな経緯から、LAPRASには採用人事担当として中途採用されますが、法務をやりたい気持ちと会社の法務担当が欲しいニーズが一致し、法務のキャリアをスタートさせました。

「法務のいいださん」と名乗り始めたのもそのあたりからです。右も左も何もわからず、知り合いを作りたくて、法務互助会に参加したり、noteを書いたり。
自分の文章に反響をいただけたことが嬉しくて、noteを毎月書くようになって。3月15日には書籍(単著)「情報収集力とコミュニケーション力で確実に進める ひとり法務」を出版させていただく運びになりました。長くなりましたが、今日はよろしくお願いします!

チザワカとわかほう


上村さんは「知財若手の会(チザワカ)」、飯田さんは「U-35若手法務の会(わかほう)」と、若手の知財・法務人材が集まるコミュニティをそれぞれ主催されています。

「知財若手の会(チザワカ)」は、どのようなコミュニティなのでしょうか。
上村:「知財若手の会(チザワカ)」は、LeXi/Vent(レキシベント)が運営する「若手で語る知財」を目的としたイベント運営を行う団体です。若手を「35歳以下」「知財歴3年以下」または「学生」と定義しています。「知財歴3年以下」は知財業界特有かもしれないですが、僕のように研究から突然知財にシフトするキャリアが実態として存在するので、年齢を気にせずにコミュニティに入ってこられるように設定しました。

チザワカでは、実際にどのような活動をされていますか。
上村:知財業界の若手を集めて、ベテランの話を聞く会が主力の活動です。あとはLT会やオフ会、最近は勉強会コミュニティも立ち上げています。

チザワカをやってみて、なにか得られたことはありますか。
上村:参加者から「同年代で交流する機会がなかったのでありがたい」と言われたこと。活動を機に若手ともベテランの方とも知り合えたことと、自分の成長につながったこと。プラスしかない。反響、人脈、自分の仕事。参加者だけでなく、自分にもちゃんと返ってきました。

ベテランは若手と触れ合う機会を求めているけれど、自分から作ろうとしない。だから、若手が集まる場に価値を感じてくださるんです。若手へのプロモーションを将来の投資と思っていただける方からスポンサー料をいただいて、その費用で会を運営しています。加えて、Lexi/Ventに自分の活動の支援をしてほしいという依頼ももらったりします。

スポンサー料を稼ぐと、参加者に還元できるし、運営メンバーのモチベーションも上がる。ビジネスモデル的に形成しないと、この会は永続的にならないなと思っていたんですけど、昨年本業の会社で副業可能になったので、事業化して、今のスタイルに落ち着いています。



一方で、「U-35若手法務の会(わかほう)」はどのようなコミュニティでしょうか。
飯田:「U-35若手法務の会(わかほう)」は、企業法務の35歳以下のメンバーを対象にやっている交流会です。過去2回、有志で運営メンバーを募って運営しています。
35歳以下の若手企業法務の人が集まる会としているので、事務所に所属する弁護士さんや、35歳オーバーで初めて法務になった方は対象外です。
現在は私が主催者で、運営スタッフと登壇者は毎回ボランティア。有志団体でありたい思いが強くある会なので、マネタイズはしない理念でやってます。

チザワカの場合は、35歳以上の方でも知財歴が3年以下であれば参加できるけれど、わかほうは年齢で区切っているんですね。そして、マネタイズはせず、全てボランティアの運営。
飯田:社会人歴がそれなりに長いと、職務知識がなくても成果が出るから、社会人歴の長さと法務歴の長さを同等にカウントして「若手」って一括りにするのはフェアじゃないなと。
やっぱり若手法務が安心して交流できる場を作りたいので、先輩風を誰かが吹かせたり、お金がちらついたりするとちょっと違うなと、なんだろう.....わかほうは、みんなが横の繋がりを持つ会で、それ以上の何物でもないっていうのを担保したいんです。



わかほうをやってみてよかったことは、参加者同士の横の繋がりが生まれたことでしょうか。
飯田:そう思います。
参加者には「この会で名刺交換しただけでは何も起こらない」って、結構口酸っぱく言っているんです。帰り道で連絡するなり、SNSフォローするなりして、次に相手と会う機会を自分で作らないと何も動かないし、知り合いはできないよって。その結果、2回目のときに、「この3人で会うのは4回目です」「このメンバーで勉強会しました」みたいな変化があって、それはすごく良かったなと思います。
参加した人の顔色が明るくなっていくのがすごく嬉しくて。「名刺交換、初めてしました」「私まだ法務って言えるかわかんないんです」みたいな感じで1回目に来ていた方が、2回目になると初めて来た人に会場を案内してくれたり、登壇者に質問しに行ったりしている。この子はわかほうがあったことで、キャリアが上向いたかもしれないって思うんです。
ここで周りに相談した結果転職した人もいて、参加者のキャリア形成にとっていい場になっているんじゃないかなと思っています。



若手知財・若手法務のキャリア


お二人の個人のキャリアに関する考え方もお伺いしたいと思います。

上村さんは、やりたかった研究開発の仕事から、自分の意思と関わりなく知財に異動。その後も知財部門で転職されて、面白さを見出されているように思います。
知財の仕事の面白さって、何だと思われますか。
上村:知財は、企業の儲けの源泉に、最初から最後まで関われます。アイディアが生まれてから製品化されて、そのアイディアや製品が死ぬまで、知財が関わります。その事業そのものに知財の視点で切り込めるのは面白いなと思います。


対する飯田さん。法務の仕事の面白さとは。
飯田:法律って特殊なものだと思っていて。法律を作ってみんなで守ることによって、人間が発展してきたわけで、ってことはこのルールって、今の時点で人類が発展するための最適解なんですよね。
そんな、今までの人類の英知が全部詰まってるものをもとに仕事をしてる。今自分がコミットして、自分がやった解釈や自分が疑問に思ったところは、数年後に次のバトンに繋がる。そこを契約書のミクロな視点と法律というマクロな視点でどっちからでも見渡せるのが楽しさかなって。

上村:僕も今中小企業診断士の勉強をしていて、会社法と民法めちゃくちゃおもろいなって思うんですよ。飯田さんのいうルールがベースになっていて、ビジネスと繋がるのはすごい面白いなと。
それから、視点は変わるんですけど、知財業界って安定していて、食いっぱぐれがないように思います。ちゃんと仕事して知識や経験を蓄えれば、努力は裏切らないという良さがあるなと。法務もそうなんじゃないかと思うんですが、どうですか?

飯田:そうですね。リーガルテックやAIの進化があって、ある程度今の時点で絶対定年までみんな食いっぱぐれないかって言われると、マニュアル通りの定型業務しかやっていない人は、もしかしたら難しいかもしれない。でも、全てが機械化・定型化できるわけではないし、知識に関しては努力で積み上げた人が強いというのは間違いないので、そういう意味では食いっぱぐれないための積み上げができやすい職種だとは私も思います。


今後、ご自身のキャリアをどのように進展させたいですか?
上村:今後も知財を軸にはしていきたいですが、IPランドスケープを通して、もっと事業側に関わっていきたいです。できるだけ、ビジネスに寄り添っていきたい。知財部門に軸足を置きつつも、社内コンサルタントみたいな動き方ができるといいですね。

飯田:今の段階で具体的に「これを成し遂げたい」みたいなのは、全然思ってないですが、私には「ジーニーになりたい」ってコンセプトがあります。ご主人様がやりたいことを何でも叶えてあげられる存在になりたい。「ご主人様」を噛み砕くと、誰かの夢を叶えてあげたくて人のために尽くす感じかなって最初は捉えていたんですけど、法務の仕事を4年やってみて、人ではなくて事業に尽くしたいんだってわかりました。このサービスが世の中で広がれば、世界が良くなったり、周りの人たちが幸せになる。そういうサービスに対して、「君が今つまずいてるところはどこだい、それを取り除いてあげるよ」っていう。
今は会社のサービスに惚れ込んでいるので、このサービスの課題を取り除きたいと思っています。でもある程度ビジネスが成熟したら、他のビジネスに興味を持つかもしれなくて、そこは正直、未来の自分がどう考えるかはわからないと思っています。それから、やっぱり文章を書くことがすごく好きなので、それはこれからもライフワークとして続けて行きたいと思っています。

ここで出会えたのも何かのご縁です。お二人のその後もぜひ取材させてください!
本日はありがとうございました。




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