知財お仕事百景 #10 - ゾンデルホフ&アインゼル特許事務所・伊藤潤先生

公開日: 2026-04-29

知財業界で活躍する実務家のキャリアを深掘りするインタビュー、「知財お仕事百景」。
第10回は、ゾンデルホフ&アインゼル特許事務所・伊藤潤先生にお話を伺いました。


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知財未経験から企業知財へ

本日はどうぞよろしくお願いいたします。
弁理士の伊藤潤と申します。生まれは愛知県名古屋市ですが、3歳の時に刈谷市に移りました。愛知は工業が盛んで、多くの人が愛知で一生を終えますが、私は天邪鬼なので県外に行きたいと思い、京都大学を目指して合格しました。最初は薬学部志望でしたが、模試の結果が悪く工学部に変更。化学系が面白いかもと思い、工業化学科に入学しました。大学院では材料化学を専攻し、分析化学の研究をしていました。

大学院卒業後、最初は企業への就職を選ばれています。
就活の当初は知財に関する知識もなく、また自分が知財の仕事をすることなど考えてもいなかったため、自然と事業会社への就職を選択しました。色々な会社を受けたのですが、なかなか上手くいかず、専攻の推薦枠に応募して通りました。クラレという会社です。

企業では知財部に配属。知財の仕事をするつもりがなかったとおっしゃっていましたが...
クラレでは、新入社員に配属希望調査を行い、本人の希望と会社が考える適性をもとに配属が決定します。配属希望調査の際、知的財産部という部署に目が留まりました。理系採用で東京に配属されるのはこの部署だけ。定員は2名、1名は東京、もう1名は倉敷配属でした。
ここで「都会で働いてみたい、研究とは別のことをするのも面白そう」との考えが芽生え、1/2の確率にかけて、第1希望に知的財産部と記入しました。当時は知財がやりたくて入社するような人もいなかったので、書けば希望が通ると思ったんですよね。それに、院で学んできた分析化学は、化学の領域では傍流です。クラレは主に高分子合成の会社。研究開発部門で学びを生かせるイメージがつかなかったんです。
こうして、狙い通り東京本社に配属されました。知財の知識はほとんどありませんでした。



知財の知識がない中で、弁理士をなぜ目指そうと思われたのでしょうか。
配属されてみると、弁理士試験合格者や学習者が複数人いました。また当時の直属の上司が弁理士試験をどんどん受けなさいというスタンスでした。「せっかく知財をやるのであればプロになってみよう」という気持ちが芽生え、配属2ヶ月後にLECに通い始め、近しい先輩と切磋琢磨しながら、2015年に弁理士試験に合格しました。

企業での6年間は、どのような仕事をしていましたか?
主にファインケミカルや各種高分子材料についての事業を担当し、発明発掘、国内外の特許出願権利化、FTO、知財教育、係争対応等を行っていました。
事業部ごとに担当者がつくのですが、多くても2名体制で、その事業部の特許に関することについて担当者が丸ごと面倒をみる感じでした。経験が浅かろうと事業部は担当者に頼らざるを得ないため、否応なしに勉強するしかなく、成長する環境でした。
また、上司が明細書などの書面は自分で書けるようになるべきという考えの方だったので、容赦なく鍛えられました。明細書や中間書面の内製比率が高く、現在の業務の下地としてかなり役に立ちました。

企業知財での経験で、得られたものはありますか。
今振り返ってみると、企業知財での経験は、とにかく「事業会社側の気持ち、事情がわかる」という点で非常に役に立っていると実感します。事務所に作成を依頼した明細書なども自社内で一度書いてから事務所に依頼していたので、事務所側になった今となっては、クライアントの気持ちがよくわかります。クライアント側で何がボトルネックになっているのか、依頼内容にはどのような背景があるか、社内政治的な観点なども含め、解像度高くイメージすることができるので、スムーズなやりとりや適切な提案に繋がりやすいと思っています。
また、アメリカの法律事務所にてトレーニーとして半年滞在した経験も、現在の内外の仕事に活かされています。滞在中は弁護士による米国特許法のレクチャーや、ワシントンDCエリアの他の事務所が定期的に開催する日本人向けレクチャーを受ける機会もありました。Patent AgentになるためのPatent Bar Examにも合格し、英語力、海外法の知識などがつきました。海外の専門家と話すことを恐れなくなりましたし、アメリカの地理にも詳しくなりました。

事務所への転職と、弁理士としての活躍の場の広げ方

企業から事務所への転職のきっかけは?
エージェントからの連絡がLinkedIn経由であり、いつもは無視するのですが、たまたま話を聞いてみて、事務所で力試しをするのもおもしろそうだと思い、割と安直に転職しました。話聞いてみたらその気になっちゃうタイプなんですよね(笑)。
事務所での実務経験はないので、書類で落とされるようなこともありましたし、今所属する事務所の情報もあまり持っていなかったのですが、受けるだけ受けてみようと思い、受かって転職することになりました。

現在の事務所での業務内容について教えてください。
専門は化学なので、9割ぐらいは化学ですね。機械も時々担当しています。国内・内外が5割、外内5割ぐらいの比率です。
知財実務だけでなく、事務所のサイトやオフィスレイアウト変更、マーケティングに関する企画なども事務所の弁理士と一緒に担当しています。

「仕事が早い」と評判の伊藤先生ですが、秘訣はありますか?
企業知財時代に瞬発力を求められることが多かったのが原因かもしれません。事業部からの依頼のスピード感に対応するには、事務所に頼む前に自分で手を動かすしかなかった。
このアウトプットスピードは、企業から事務所に行っても生きています。マイルールというか、目標として設定しているのは、「クライアントの初稿期限の1週間前に送る」ですね。そうすると、仕事がたまらない。たまるとどんどん遅くなる。目の前の仕事がはけていけば、次の仕事が早く終わるじゃないですか。心配性なのもあるのかもしれません。「期限ギリギリになって病気になったらどうする?」ぐらい思っちゃうので、とにかくスピードは大切にしています。

そんな中、「弁釣会」の活動もなさっています。弁釣会とは?
2020年にTwitter(現X)上で参加者を募って結成した、弁理士限定の釣りサークルです。最初は、単に関東での釣りがわからずに、近郊の釣りスポット情報や釣り仲間が欲しかったというだけの動機でした。弁理士だったら誘いやすいかなとも思いました。活動についてのルールは特になく、それぞれ各自で自由に釣りをしたり、たまに集まって釣りをしたりしています。現在20人ぐらいいるのですが、未経験または初心者で入会される方も多く、そういった方に釣りの楽しさを伝え、知財業界の釣り人口を増やすのも重要な活動目的のひとつとなっています。知り合いが増えれば、入ってくる情報も増える。人のつながりの起点になればと思っています。
「弁釣会」は標準文字とロゴのそれぞれについて商標登録をしています。グッズなんかも作っているのですが、登録費用をグッズの売上で回収できたらいいですね。



30代の知財人材へ向けて

30代のキャリア形成をどのように考えていらっしゃいますか?
30代は、知財に限らずキャリア形成において最も重要な年代であると考えています。私は20代から知財の仕事をしている珍しいタイプで、30代は知財のスキルをさらに伸ばすことに重きを置きました。20代のうちに自分の適性を見極められたら、30代でそれを伸ばしていくのを意識するのがよいのではと思っています。ここで培ったものが、40代以降にどのような道を進むにせよ、役に立つのではないかと考えています。

キャリアに悩んでいる人(特に同年代)にメッセージをお願いします。
​​私自身企業と事務所の両方を経験し、また弁釣会を含めた横のつながりから情報が入ってきますので言えるのですが、この業界、本当に会社それぞれ、事務所それぞれだと思います。よく「事務所か企業知財部か」の二軸、対立構造で語られがちですが、実際はグラデーションです。自分の適性を考え、それにマッチした仕事を探すために、できるだけ色々な方に話を聞いて判断するのがよいのではと思います。自分の適性はそんなにすぐわかるものではなく、行ってみて実際にやってみてわかることも多いと思います。



今日は貴重なお話をありがとうございました!


最後までお読みいただきありがとうございました!
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